古畑名シーンAdvent Calendar2014 Vol.05 ―第20話『動機の鑑定』より

古畑名シーンAdvent Calendar2014、ついつい甘えから3日休んでしまいましたすみません。
言い訳をしておきますと、作品の講釈はいくらでも書けるんですが、最後の「今日のまとめ」がなかなか思いつかずに苦しんでいます。。。
(24と違って、古畑本人から学べることってあんまりないですからね… 基本、犯人側からの目線になりますね)

今回も比較的渋めのセレクトかもしれません。前回の八十助さんに続き、今回も歌舞伎役者さんのゲストです。
二代目澤村藤十郎さん。歌舞伎通の人でなければ、あまり馴染みのない役者さんかもしれません。
私も後から調べて知ったのですが、現代劇への出演はこの『古畑任三郎』が初。
その2年後の1998年には脳梗塞を患い舞台からは遠ざかっていたそうなので、古畑以外で拝見したことがないという方も多いと思います。
しかし、柔らかい口調ときれいなお声が印象的で、この回が好きだというファンも多いことでしょう。

なお、その後は公の場へ出られるほどに回復され、近年では歌舞伎の振興に尽力されているそうです。
初日に澤村藤十郎が出演!大阪松竹座「関西・歌舞伎を愛する会 結成三十周年記念 七月大歌舞伎」| 歌舞伎美人(かぶきびと)

昨2013年に市川團十郎さんの葬儀で撮影された藤十郎さんの写真をニュースサイトで拝見しましたが、髪がロマンスグレーになっていました。素敵に歳を重ねられているなぁと思いました。
(ちなみに藤十郎さんと田村正和さんはともに昭和18年生まれの同い年です)


しかし、今回スポットを当てるのは藤十郎さん演じる骨董商・春峯堂の主人ではありません。

春峯堂主人の言いなりでアリバイ工作に加担するも、中盤で古畑の執拗なマークに耐えられなくなり、逃げ出そうとしたところを口封じのため春峯堂主人に殺害されてしまうという悲しき共犯者、角野卓造さん演じる錦織美術館館長・永井です。

骨董連盟の理事を務める春峯堂は、自分の口利きで錦織美術館の収蔵品を数多く文化財に推薦。多額のバックマージンを手中に収める、ダークサイドな存在です。そのため館長の永井は春峯堂にまったく頭が上がりません。

「あんたとあたしは一蓮托生」と春峯堂は言いますが、完全に春峯堂の犬。
逃げ出そうと思った頃には、時既に遅し、でした。


春峯堂と永井が、著名な陶芸家である川北百漢の工房を訪れているところから話はスタートします。

川北百漢いわく、 来週から錦織美術館で公開予定の重要文化財「慶長の壺」は自分が春峯堂を陥れるために作った贋作で、本物は自分の手元にある。贋作だと公表されたくなければ展示は取りやめ、骨董協会の理事を下りるよう春峯堂主人に求めます。

今さらひくことなどできない春峯堂主人と永井は協力してアリバイ工作し、川北百漢を殺害してしまいます。

さらに物語の中盤では、逃げ出そうとする永井を春峯堂は慶長の壺で撲殺、そして展示品の日本刀で斬りつけて自殺を装います。作品の冒頭で複数の人間が死ぬ、もしくは既に別の殺人を犯しているというパターンはあるのですが、中盤で2つ目の殺人が起こるというパターンは大変珍しく、その点でも印象的です。

古畑と対する永井は、終始苛立っています。罪の重圧に耐えかねて落ち着かない様子が伝わってきます。

作中では詳しく描かれてはいませんが、きっとこれまでも永井は春峯堂の無茶な要求を、お金をちらつかせて無理矢理飲ませてきたのでしょう。

残念ながら永井は「根はいい人なんだろうなぁ…」とは思えないんですよね。
きっとそれほど慕われるタイプでもなさそうですし、お金に目が眩む性分は春峯堂の影響というだけではなさそうです。
そんなところを春峯堂の「捨て目」で見ぬかれ、うまいこと利用されたのでしょう。

後戻りできなくなる前に、泥沼から抜け出せなくなる前に、汚れが染み付く前に…
黒い関係を断ち切る勇気を持たねばなりません。

■まとめ
1. 危ない取引やブラックな報酬をちらつかせてWin-Winを謳うような人間からは早く逃げろ。
そんなものは「恩」でもなんでもない。
2. 自分の心に邪悪なものを抱えていると、もっと強大な悪に利用される可能性が高くなる。

##おまけ

もうひとつ、この回の個人的なみどころポイントは田村正和さんと角野卓造さんのカラミです。
分かる人にしか分からないと思うのですが、TBSの東芝日曜劇場の枠でやっていた「カミさんの悪口」というドラマを楽しみに見てた人なら、「ここになぜ橋爪功がいないんだ!」と思ったことでしょうw

あのドラマも2年くらい前に全話見なおしたんですが、やっぱ面白いです。
携帯電話の普及していない時代ならではの、すれちがいのドタバタ劇っていうのは大好物です。