実はここ4ヶ月くらい、本を書いていました。
『WordPress 標準デザイン講座【Version 4.x対応】』という本で、同じ名古屋在住の石原さんとの共著です。
2015年2月27日(らしい)、翔泳社さんより発売されます。
1月中旬にはすでにAmazonに掲載されていて、宣伝や拡散できるようにはなってたんですが、原稿が完成していない状態で宣伝する気にはまったくなれず、このタイミングでのお知らせとなりました。
※まだ校正作業やサンプルデータの調整が続いており、完全に脱稿までは至っていないのですが…
ここでは、出版社さんからの公式情報には書いてない、この本の特徴などを書いていきます。
目次
本書の特徴→『かんたん』ではなく『スパルタ』
この本はWordPress入門者向けと謳ってはいるのですが、他のWordPress初心者本と大きな違いがあります。
それは、「かんたん」というイメージを極力出さないようしたことです。
正直、WordPressは難しいです。知れば知るほど難しいです。そういうスタンスで書いています。
仕事仲間に「Kさんってスパルタですね」ってよく言われますが、結果著書もそうなってしまいました(^_^;)
どうしても出版社さん的には売れるようなコピーにしないといけないでしょうから、ターゲットのミスマッチが起こらないといいなあ、という点はどきどきしながら願っていました。
Amazonの情報を見る限りでは、帯のコピーが「かんたん」とか「できる」とかではなくて「きちんと身に付く」「しっかり学べる」となっていたので、その点は少しほっとしています。
たとえば「投稿タイプ」「フィールド」「タクソノミー」「ターム」などの、そもそもの言葉の意味や、CMSをさわるにあたって絶対避けて通れない文字コードやBOMの話、エディタでは不可視文字を表示させなさいという話、PHPのエラーコードはちゃんと読みなさいという話など、他の本ではカットされがちな内容をできるだけ詰め込みました。
…そのため、思ったよりボリュームがでてしまいました。翔泳社さん、編集の手間を増やしてしまって申し訳ありませんでした。
本書はこんな人におすすめです
WordPressの基本機能をひと通り紹介しつつ、自分でサンプルサイトを作っていくという構成です。
その流れの中で概念や用語の説明から具体的なコードまで紹介しているので、かなりもりだくさんです。
それがゆえに、ほんっとに初めてWordPressを使う人が1冊目に手に取る本としては、少々ハードルが高いかもしれません。
「自己流で少しやってみたけど、WordPressの正しい作法が知りたい」
「もう少しかんたんなWordPress本で雰囲気をつかんだので、さらに深く学びたい」
「これから業務として、WordPressサイトをたくさん作っていきたい」
「極力手軽にやるのではなく、なるべくコードを自分で書いて、意味を理解しながら叩き込んでいきたい」
という方などには、使いごたえのある本になっていると思います。
(本書の前書きでも想定ターゲットについて触れていますので、参考にしてください)
『WordPress標準デザイン講座』の前後に活用するとよいかもしれない本(独断と偏見)
説明文には「入門者におすすめ」とは書いてありますが、HTMLやCSSについてはある程度の土台がある前提で解説を進めていますので、Web制作の経験がまったくないとキツイ本かもしれません。
個人的には、「WordPressは、コンテンツ & HTML+CSS の両者をより便利に管理するためのツール」だと思っているので、プロとしてWordPressを触る人でなくとも、HTMLとCSSがどんなものかはなんとなく知っておいた方が、いろいろとメリットがあると思います。
HTMLとCSSに自信のない方は、本書の前に同じシリーズの『HTML&CSS 標準デザイン講座 【HTML5&CSS3対応】』という本で学習してからWordPressへ進むのがおすすめです。
※この本は、出版社さんから「紙面レイアウトや構成の参考に」ということで頂いたのですが、とても丁寧に解説されていて、HTMLとCSSでしっかりとしたコーディングができるようになりたい人にはぴったりだと思います。著者の方は存じ上げなかったのですが、編集担当さんから「かなり早く原稿をあげていただいた」と聞き、しかも単著でここまでのものを書けるなんてすごいなぁ…と、とにかく自分のちっぽけさを感じてしまいました。
「WordPress自体、一度も触ったことがない」という方は、『いちばんやさしいWordPressの教本 人気講師が教える本格Webサイトの作り方 第2版 WordPress 4.x対応』あたりはいかがでしょう。
この本は、今回の著書とは対照的で、「なるべくコードを書かずに、既存のテーマとプラグインで実現する」というスタンスを取っています。
※この本の著者の石川さん・星野さんには、本書のコラム寄稿や原稿チェックなどで大変お世話になりました。
ちょっと前(2013年6月)の情報ですが…
↓
WordPress関連書籍の中より、ユーザレベル別にオススメを紹介します! | WP-D
というブログ記事がありました。
この記事で言うと、本書は「脱初心者 WordPressを使ってサイトを作りたいという方」のレベルで、上記記事で紹介されている2冊よりはちょっとだけ手前、といったところでしょうか。
なお本書では基本機能をひと通り扱った関係上、それ以上のカスタマイズは割愛しています。
たとえば新着記事の表示とか、PHPのforeach, switch文を使ったカスタマイズとか。
なので、逆引き型のTips集とか、PHPカスタマイズに特化した本を次に選ぶとよりよいでしょう。
逆引き型のTips集としては『現場でかならず使われているWordPressデザインのメソッド』がなかなかよかったです。
執筆陣に知人が多く名を連ねているので『おつきあい購入』したというのが正直なところなのですが、さすがWordPress案件を数々こなすメンバーの本だけあって、たしかに現場でよくありがちな要望に対する具体的な実装方法がいろいろ紹介されているので、たとえばバイト君に「この本の◯ページの内容で実装よろしく」みたいな使い方ができて、とっても便利でした。
上記記事で紹介されている『PHPによるWordPressカスタマイズブック―3.x対応』はもう4年以上前の書籍ですが、かなりお世話になりました。
本書でベーシックな企業サイトの制作がある程度できるようになったくらいの方で、その先もっと柔軟なカスタマイズができるようになりたいという人向けの本だと思います。
少し記述が古くなっている部分はありますが、今でもたまに参照しています。ぜひ改訂版を出してほしい本のひとつです。
執筆オファーを受けるにあたって考えたこととか
オファーをいただいた時、お受けするかどうか結構悩みました。悩んだ期間はせいぜい2日くらいなんですけど、いろいろ考えました。
既にWordPress関連の書籍は飽和状態。
正直、WordPress本の新刊が出るたびに「またか」「もういいんじゃね?」と思ってました。
ちょうど時を同じくして、PCスクールの講師をしている友人から「WordPress集中講座の講師をやってもらえないか」という打診を受けていました。
そこで、使用するテキストを選んでいたのですが、どうしても講座で話したいことをひと通り網羅した本が見つからずに悩むことに。。。
スクールだと、流れに沿ってサンプルサイトを作っていくタイプの書籍を使いたいのですが、どうしてもそういう本はコードの紹介が中心になる分、前提知識や概念の説明があまりされていない本が多いです。
でも、以前『WordPressなど、各種CMSを始める前に知っておくべき内容をまとめとく』という記事で書いたように、WordPress自体の話をする前に教えておかなくてはならない話ってすごくたくさんあります。
結局その部分は自作の資料を作って配布するしかないなぁ、と思っていたところ…
この2つのオファーがつながったわけです!
翔泳社さんからも、「Web制作者など、しっかり学びたい層をターゲットに」というお話でしたので、
上記ブログ記事で書いた、WordPressを触る前の制作環境などの話をきっちり盛り込んだ本を作れれば、私が書く意味もあるのかな、と。
そういえば私、以前Twitterでこんなことも発言してました。
普段からプログラム書く人はDwでPHP書いたりしないと思うけど、デザイナーとか普段プログラミングしない人ででCMSのテーマ制作にDw使ってる人は絶対「非表示の文字→表示」にしましょう。
— Kさん(のむらけい) (@mypacecreator) June 10, 2012
WordPress(他のCMSでもいいけど)の入門書で、第2章くらいに怒涛のようにPHPのエラーメッセージのよくある例を紹介してるのがあるといいんじゃないかと思った。これが出たらスペルミスです、これが出たら括弧が閉じてません、とか
— Kさん(のむらけい) (@mypacecreator) September 6, 2012
要するに、こういう話にも触れる本を作れる機会をいただいたわけです。
そのおかげで、スパルタな本になったわけですが。。。
もうひとつ、講座の教科書選びの際に、過去に自分が購入したWordPress書籍を読んでいたところ、WordPressのバージョンアップとともに変わっている内容が意外と多いなと感じたというのも、オファーを受けるひとつの要因となりました。
WordPressに限らずですが、バージョンアップが頻繁に行われるツールは(既にデファクトスタンダードとなってしまったツールは特に)、情報を持っている者が定期的に新しい情報を発信していく義務があるなぁと改めて思わされました。
執筆中に4.1がリリースされたため、テーマ関連の新しい関数(タイトルタグやページネーションなど)について盛り込めたのはよかったなぁと感じてます。
反省点もあります
もちろんすべてがすべて思い通りに書けたわけではありません。
いくらでもつらつらと書けるブログ記事とは違い、書籍には紙面やページ数の制約があります。泣く泣く落としたページやトピックも少なくありません。
また、執筆終盤になって「こうすればよかった」と気づくこともあり、間に合う分は修正したのですが、それでもいろいろ反省点はあります。
共著の石原さんは「こんなに大変だとは思わなかった」と言っていました。
私は、何人か執筆経験者の知人がいるので、大変だということは分かっていたつもりでしたが…「やっぱり大変でした」。
よっぽど最初で最後になるんじゃないかとは思っていますが、いい経験になりました。
さいごに、執筆経験のない私にわざわざオファーくださった翔泳社の諸橋さまに、この場をお借りして厚く厚く御礼を申し上げます。
(&ギリギリまで校正作業でお手数をお掛けして申し訳ありません。。)