帝王切開での出産。助成制度・保険等を活用したら自己負担0円どころか費用が黒字になり、かえって儲かった話

帝王切開での出産。助成制度・保険等を活用したら自己負担0円どころか費用が黒字になり、かえって儲かった話

2020年1月17日

37歳。はじめての出産。
ほんと妊娠出産育児は全部書き起こしたらものすごいボリュームのコンテンツになるなー、と思っている。多分これから経験する誰かの役に立つと思うけど、いろいろありすぎてすぐにはアウトプットしきれないので、思いつくたび小出しにしていくことにする。

今回は、出産育児一時金・高額医療費制度・医療保険などをフル活用した話。

今回の出産までの経過

本題ではないけれど、妊娠経過について書いておく。

3年ほど前に妊娠陽性出るも継続せず5週で終了→不妊治療開始→だらだら2年経過→体外受精→妊娠→予定帝王切開

という流れだったので、はたから見ると結構大変だったように感じられるかもしれない。でも正直、ここまでは聞いてたほどの苦労は感じていなくて、ほんとにスムーズに進むことができた。

体外受精では何度もチャレンジしてもなかなか良い結果が得られない人も多い中、私は1回目で妊娠。これは私の性格によると思うけど、だめならまあ仕方ないよねっていう心構えだったので、悲愴感もなく、いい社会勉強だったなー、とポジティブに進められた。それがかえってよかったのかもしれない。

金銭面では、行政の助成金が受けられたので、実際にかかった金額の約半分が戻ってきた。高級車くらいの出費も覚悟してしていたが、多分軽自動車か小型の中古車くらいで済んだと思う。

そしてつわりも軽く、食べ物もだいたい問題なかった。中期以降、寝起きに足がつったり手が痺れたりというマイナートラブルは人並みにあったけれど、特別大きな問題なく過ごせた。本当にありがたい。

このへんの妊娠体験については後日詳しく書き残したいと思う。

予定帝王切開になる

で、ここからが今回の本題。予定帝王切開にまつわる話。
なぜ帝王切開になったかというと、最後まで逆子が治らなかったから。

「逆子以外は順調ですね」とは主治医の談。
ちなみに私も最後まで逆子だったらしく、母親はまる2日以上かけて足から出したらしい。その節はすまんかった。
そんな私の子なので、まぁしゃーないなー、という感じ。

ただ、37年前とは違い、今では足から分娩させてくれる病院は少ない。30週から逆子体操の指示。一応しばらく毎晩ちゃんとやっていたが、途中からむしろ予定帝王切開ならもうそのつもりで進めたいという気持ちが強くなったのも事実。
医師がお腹の上から胎児をつかんで位置を変えるという「外回転術」をするかどうか訊かれたが、このままでよいと断った。

実は小学5年のときに開腹手術を経験済みなので、お腹を切られることにそこまで抵抗がなかった。陣痛の未知の痛みよりも、開腹の既知の痛みを取ったわけだ。

というわけで、38週前後でオペ枠が空いている日を確認し、「こことここが空いてますが、おすすめはこっちです」と言われた日に手術予約を入れる。おすすめの理由は深く聞かなかったが、そっちのほうが出勤してるスタッフが多いとか、予約数が少ないとかと思われる。もちろんおすすめに従う。37週6日での出産予定となった。

なお予約を入れても、前日や当日の検査で逆子が治っていた場合、手術はキャンセルとなり家に帰らされるとのこと。それもモチベーション的に困るんで、頼むからもうそのままの位置でいてくれと願う。(余談だが、ここまでのエコー検査では一度も胎児の股間が映らなかったため、性別は出てくるまで分からずに終わった。)
下半身麻酔だったので、術中の様子もバッチリ覚えている。この思い出もまた書き残したい。

今回利用できた制度

名古屋市不妊治療費助成事業

出産費用ではないけれどとても助かったので触れておく。
名古屋市の場合、採卵を伴わない人工授精(一般不妊治療)と、採卵を伴う体外授精・顕微授精(特定不妊治療)には、助成金が支給される。

産科、婦人科、産婦人科、泌尿器科、皮膚泌尿器科を標榜する医療機関において不妊症と診断され、名古屋市内に住民票を有する間に受けた、人工授精に係る保険適用外治療(医師の診断に基づく治療に限ります)が対象です。

名古屋市:名古屋市一般不妊治療費助成事業のご案内(暮らしの情報)
http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/8-7-5-2-0-0-0-0-0-0.html

医療保険が適用されず、高額な医療費がかかる、配偶者間の体外受精・顕微授精(以下「特定不妊治療」とします。)に要する費用の一部を助成します。

名古屋市:名古屋市特定不妊治療費助成事業のご案内(暮らしの情報)
http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/8-7-5-1-0-0-0-0-0-0.html

出産育児一時金直接支払制度

予定帝王切開の可能性が出てきた際、出産費用が少し高くなりそうだなぁというのが心配だった。病室を個室にするか大部屋にするか…ということも決めないといけなかったので、このタイミングで遅ればせながらお金の計算を真面目に行った。

私が出産した病院(名古屋市立の総合病院)では、通常の分娩・入院費は約55万程度(個室代別)とのこと。
これだけだと結構な出費に感じるが、国保/社保にかかわらず、健康保険組合から出産育児一時金42万円が支給されるので、実際はこの差額分が自己負担となる。

出産育児一時金直接支払制度とは
世帯主の方と出産予定の医療機関等が、出産育児一時金の申請・受給を医療機関等が世帯主の方に代わって行うことに合意をすることにより、医療機関等が出産にかかった費用を、出産育児一時金の額(40.4万円(「産科医療補償制度」加入の医療機関等で出産した場合は42万円))を限度として、名古屋市国民健康保険に請求し支給を受ける制度です。

名古屋市:出産育児一時金 直接支払制度について(暮らしの情報)
http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000007736.html

しかもかかった費用が42万に満たない場合は、差額分も受け取ることができる。

高額療養費制度

個室希望の場合、部屋代は別途。
私の入院先では、産科病棟は1日8,000円(税別)の一般個室が2つしかなく、15,000円(税別)の特別個室になることが多いらしい。なんだそのバランス。「特別」の意味とはいかに。。。

帝王切開だと8泊9日とのことで、計15万弱。ここをケチるか贅沢するかどうか悩んでいたのだが、正式に手術予約を入れた際、渡された書類一式の中に「高額療養費制度についてのご案内」というものが入っていた。

これは!

通常の分娩とは異なり、帝王切開は健康保険が適用になる。
つまり、原則3割負担。これだけでもかなり助かる。

さらに健康保険には「高額医療費制度」といって、手術や入院などで一度にまとまった医療費がかかる際、一定額以上は保険組合が負担してくれるというありがたい制度があるということを知った。

細かい規定や上限額は加入している健康保険や前年度所得によって異なるので、自分の加入している健康保険組合に個別に確認すべし。
私の加入している、名古屋市の国保の場合はこちら。

高額療養費の支給について
病院の窓口で支払った医療費の自己負担が、1か月に一定の額(自己負担限度額といいます。)を超えたときは、あとでその超えた額が国民健康保険から高額療養費として、世帯主に対して支給されます。
また、限度額適用認定証等を病院等の窓口に提示することで自己負担限度額まで(食事代・差額ベッド代などは含めません。)を支払えばよい制度があります。

名古屋市:高額療養費制度について(暮らしの情報)
http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000007719.html

手術、入院前にあらかじめ手続きをしておけば、退院時の会計の際にあらかじめ減額してもらえるので、予定帝王切開の場合は出産前に手続きしておくのがおすすめ。
緊急帝王切開の場合も、あとから手続きすればお金が戻ってくる。

結果、この制度を活用したおかげで、出産育児一時金42万円の中で全額収まった。個室利用を選択しても、退院時の支払いはなんと0円!
(入院5日目に一般個室が空き、部屋を引っ越したのでその分部屋代が安くなった、というラッキーも重なる。なお、一般個室の方が狭いのだが、かえって間取りなどコンパクトで使いやすく満足度が高かった。)

さらに、42万円の余りも後日の手続きによって受け取れるので、最終的には黒字になってしまった。ありがたや。
大部屋を選択していたら、もっと費用が戻ってきたのか…と思うと、なんかすごい。

民間の医療保険

さらにさらに。

結婚直後に加入し、10年間放置していた医療保険の約款をちゃんと確認したところ、帝王切開での出産は保障対象となることが判明。入院日数+手術内容 に応じた保険金が受け取れるというボーナスつき。

医療費控除(確定申告)

これは知っている人も多いと思うけれど、年間でかかった医療費(家族全員分合算OK)が10万円を超えると、確定申告によって税金がちょっと安くなったり還付金が受けられたりする。
出産費用も対象になるので、通常分娩の方も活用すべし。

その年の1月1日から12月31日までの間に自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合において、その支払った医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額(下記3参照)の所得控除を受けることができます。これを医療費控除といいます。

No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm

私の場合は出産費用の自己負担はないので控除対象にならないが、不妊治療の方で助成金を差し引いても10万以上使っているので、今度の確定申告に含めてもらうよう税理士さんに相談予定。
体外受精の治療開始が1月で出産が12月だったため、年をまたがずすべて2019年の支払いになったのもでかかった。

以上が今回の妊娠・出産で私が受けられたお金の支援の一覧。保険組合や自治体によって助成内容に差があると思うが、これほど充実しているとは知らなかった。ありがたいの一言。

産後の感想

術後の傷の痛みはそりゃあったし、まる2日点滴つなげっぱなしだったり、数日間は自由に身体を動かせずつらかったけれど、手術室に入って赤ちゃんが出てくるまではたったの34分。手術時間も50分足らずで完了したので、聞いてたよりは随分あっけなかった。
ただ、産声を聞いた時はこみ上げるものがあった。泣きはしなかったけどね。

「帝王切開は産後のほうが痛い」といろんな人に言われたが、他の入院中の方々を見てると、経膣分娩だった人の方がおしもの痛みでまともに椅子に座れなくてかえって辛そうに見えたし、人それぞれ大変さは違うと思うけど、私にとってはかなり恵まれた出産体験だったと感じている。

現在、産後約1か月半。幸いマタニティブルーとか産後うつ的なものも今のところなく過ごせている。
もともとそこまで子ども好きというわけではなかったが、よく聞く「うちの子がいちばんかわいい」というのはほんとうだった。

夫も約1か月半の育休を取ってくれたので、家事など頼りながら、慌ただしいながらも愉快な日々を送っている。ちなみに夫の職場で男性が育休を取るのは初めてらしい。「制度があるんだから使って当たり前」と言って押し切ったみたい。

まだ産休中なので育児に集中できているけれど、仕事復帰した時にどうなるか、もう少し月齢が上がっていったときにどういう悩みが出てくるか分からない。でも、今感じている満たされた気持ちを忘れないようにしていきたい。