【このエントリーは会社員時代に書いた記事のリブログです。】
前回に引き続き、WCAN 2010 Summerで聞いたお話からの投稿です。
今回のテーマは、「情報アーキテクチャ(IA)」について。
「情報アーキテクチャ」?
業界の人間以外のほとんどの方には聞きなれない(Web制作者でもちゃんと理解している人は少ない)用語ですね。
(何を隠そう、自分もちゃんと理解してませんでした。)
平たく言うと、
「数多くの使えたい情報を、どのように整理し、どのように伝えるかを決める戦略であり、そのための設計図」
といったところでしょうか。
今回、(株)コンセントでディレクターをされている加川大志郎さんが、実際の案件を例に挙げながらWeb制作の中で「情報アーキテクチャ(IA)」を実践するためのノウハウについてお話しくださいました。
お話の中で、個人的に特に印象に残った言葉があります。
それは、
「どういう人格のWebサイトにするか?」
という言葉です。
Webサイトの打ち合わせでは、たいがい以下のようなものを決めていきます。
- どんな内容を載せますか?(ページ構成)
- どのような人に見てもらいたいですか?(ターゲット層)
- どんなカラーや写真を使いましょうか?(デザイン面)
しかし、それらを決める前に、もう一段階手前の工程があるんです。
「どんなデザインがいいですか?」は最後まで訊かない
どうしても、業界外の人の感覚だと「Web制作者」=「デザイナー」という風に思われがちなんですが、Web制作は皆さんが思うような「デザイナーっぽい」作業ばかりではありません。
ちなみに私自身は自分のことを「デザイナー」と思ったことも、名乗ったことも1度もありませんし、むしろどちらかといえばデザイン作りは苦手な方だと思います。
それでもこの仕事に身を置いていられるのは、「デザイナーっぽい仕事」以外がたくさんあるからかもしれませんね。・・・話が逸れましたが。
お客さんとの1回目の打ち合わせ時に、経験の浅い人だとまず真っ先に「どんなデザインがいいですか?」って訊いちゃったりするんですけど、それってWeb制作の本質を突いてないんですよね。
「まずは、サイトオーナーを理解すること。サイトオーナーがやっているビジネス内容について理解すること。」
これは加川さんが強調されていたことですが、自分自身も日々心がけているつもりです。(実際はなかなか大変で、ちゃんと実践できてるか怪しいところですが)
お客さんを理解して、要望を理解して、大まかにサイト構成を頭に描いてから、サイトデザインを提案していく。こういう流れでバッチリはまると気持ちいいですね。
Webサイトを作るにあたっては、まず「誰」に「何」を伝えたいかをはじめに検討し、それに合った情報の表現方法を考える必要があります。
それが、加川さんの言う「サイトの人格を考える」ということなんですね。
(追記:元は加川さんの会社のデザイナーさんの言葉だそうです。加川さん、わざわざありがとうございますm(_ _)m)
これは、考えてみれば当たり前のことで、Web以外のものに置き換えてみればイメージしやすいですね。
Webサイト→ショップ店員に置き換えてみる
ここは加川さんの言葉そのままではなくて、私はこう解釈したって内容なんですが。
ホームページを1人のショップ店員に例えて、その人がどういう接客をするか、という風に考えながらサイト作りをすると面白いかもしれませんね。
ちなみに、よくWebサイトを「営業マン」に例える人がいます。
例えば、制作会社のうたい文句で「ホームページは365日24時間休みなく働く営業マン!営業マンの人件費とホームページの維持費を比べてみてください!」みたいなの、よくありますよね。
でも自分はこの考えには100%は賛同できなくて、というのも、Webサイトは営業マンみたいに自分から足を運んだりはできないですからね。
向こうから訪問してもらうのを待つ、という点で、「ショップ店員」というイメージの方が近いと思っています。
チラシを撒いたり看板を出したり(=SEO対策やバナー広告)といった販促活動をしながら、来店を待つという点で。
また話が逸れましたが、優れたショップ店員というのはお客さんに合わせて話し方や表情の作り方を変えてお客さんに接しています。
Webサイトも同じで、ターゲットとする閲覧者に合わせて、適した人格を与えてやることが大事ってことですね。(=平たく言えば「キャラを作る」ってことかな?)
- 若手営業マンっぽい感じ?
- やさしいお姉さんのイメージ?
- ベテラン技術屋さんの雰囲気?
- 社長自ら語ってるような感じ?
そのあたりを考えていくと、自ずとサイトのデザイン的なところや、サイト内の文章の言葉づかい、強調したい内容などについてのヒントが出てくるんじゃないでしょうか?(ちょっと拡大解釈かな?)
サイトに載せる情報をどのように表現するのか?
それが「情報アーキテクチャ(IA)」のキモだということを教えていただきました。
Webサイトは作って終わりではなく、公開してからが本当の勝負
使い古された言葉ではありますが、これはとても大切なことです。多くの制作会社やお客さんが、この事を当然理解されています。
しかし、実際にこれを実践できている会社やサイトがどれくらいあるかといえば、それはまだほんの一部なのが正直なところです。
(そして、うちだって例外じゃありません。自分の胸に手を当てて考えてみると、色々思い当たることはあります)
作ってからきちんとビジネスツールとして活用できるかどうか、それはサイトの設計段階から差が出てきます。
その為に今後必要不可欠となっていくであろう考え方やスキルが、「情報アーキテクチャ(IA)」なんですね。
こういった考え方をしっかり身に付けたうえで、こんどはお客さん側にそれを浸透させていくのが私たちWeb制作者の使命だと感じました。