WordPress 4.9で修正されたコアファイル内英語コメントの表現いろいろ

WordPress 4.9で修正されたコアファイル内英語コメントの表現いろいろ

2017年12月3日

この記事はWordPress Advent Calendar 2017 の3日目、英語 Advent Calendar 2017 の4日目を兼ねています。
(横着者ですみませんすみません。。。。空白が出るよりは埋めちゃったほうがいいかなと思いまして。。。)

さて、去る2017/11/16に、WordPress 4.9 “Tipton” がリリースされ、セキュリティアップデートである4.9.1も11/29にリリースされました。
4.9での新機能などについては既にいろいろな方が解説してくれていると思うので、今回は少し違った視点で変更点を紹介します。

WordPressのバージョンアップ時は膨大な数のファイルに変更が入ります。その中には、直接動作や機能とは関係ない、PHPのコメント部分(もちろん英語)の修正も多数含まれています。
おそらく、「こっちのほうがネイティブがより自然だと感じる」ってことで修正されたのでしょう。
英語を勉強する我々非ネイティブにとっては、いろいろ参考になるのではないでしょうか。

なお、私は受験英語しかやったことのない、海外経験皆無の日本人なので、もしもう少しニュアンスの違いについてうまく説明できる方がいましたら補足お願いします。。。

インストールを表す単語 install → installation

最も修正箇所が多かったのがこの修正。日本語では「インストールする」みたいな感じで、ほぼ名詞として使われていますが、英語では 他動詞。名詞形である’installation’に統一されたようです。

こちらの箇所では

Send debugging email to all development install.
(すべての開発環境にデバッグ用Eメールを送信)

Send debugging email to admin for all development installations.
(すべての開発環境で、デバッグ用Eメールを管理者宛に送信)

と修正されています。
メールの送り先は環境じゃなくて管理者だよね、というのも確かに。

他にも

wp-load.php
wp-admin/options-general.php

など、変更箇所はかなりの数になっていました。一括置換だと思いますが。

なお、IT用語になる前の元々のinstallの意味は、「(誰かを)(役職や席などに)就かせる、据える」という意味なんですねー。

三単現の’s’、 冠詞

日本で英語を学ぶほぼすべての人が一番最初に出会うであろう「なんでやねん案件」、それが「三単現のs」だと思います。

ソースコード内のコメントとかマニュアル・ドキュメントだと、英語でも主語がない文章って結構あるようですが、そういう箇所の動詞に今回三単現のsが追加されていました。

Reset → Resets に

こちらの箇所では、日本人が苦手なもうひとつの概念、「冠詞」についても追加されています。

Save draft or manually autosave for showing preview.

Saves a draft or manually autosaves for the purpose of showing a post preview.

draft, preview の部分が、a draft, a post preview と修正されています。どちらも数えられる名詞だからですね。
プレビュー→投稿プレビュー だったり、for the purpose ofが追加されたりと、より具体的な文章にもなっています。

話は逸れますが、

私の好きなNHK Eテレの語学番組「しごとの基礎英語」では、講師の大西泰斗先生がよくこの冠詞のニュアンスについて解説してくれていました。
そのわりにうろ覚えなんですが、

  • a → はじめて話題にするとき。文脈的にそれが具体的にどんなものなのか特定する必要がない時
  • the → 既に会話の中で、それが具体的にどんなものかお互いイメージできている時。
  • 特定の何かというよりは、一般的・普遍的なことを述べている時は複数にする。

という感じだったと思います。
なんか私の説明が下手くそで全然伝わってないですが、大西先生の説明はすごいわかりやすくて大好きです。

この場合は、「下書き」とか「投稿プレビュー」は、「どの投稿の?」とか特定する必要のない文脈なので、a を付けているのだと解釈しました。

冠詞でいうとこういうのも。

Whether current user has a capability or role for a given site.

Whether the current user has a specific capability for a given site.
(現在のユーザーが所定のサイトに対して特定の権限を持っているかどうか)

current user というのは「現在ログインしているユーザー」ですが、こっちは a じゃなくて the なんですね。
やっぱりこの辺のニュアンスの違いというのは日本人にはむずかしい。。。

あと、a capability or role(権限や役割)は、 a specific capability(特定の権限)になっています。日本語だと「権限」といえば「権限があること」を同時に指すことが多いですが、a capabilityだけだと「どういう権限でもいいの?低い権限でもいいの?」ってなるので、specificをつけて「ある特定の権限が必要」というニュアンスを具体的に出したのかな、と解釈しました。あってるかな?

こちらは、a が the に変わった部分。

Return a list of slugs of installed plugins, if known.
(もし知っていたら、インストールされたプラグインのスラッグ一覧を返す)

Return the list of known plugins.
(既知のプラグインの一覧を返す)

不特定な印象の a ではなく、対象を特定する印象のある the に変更され、冗長な表現もスッキリしています。

単語をより具体的・専門的なものに

英作文や英会話ではよく「中学で学ぶレベルの動詞を使えばOK」っていわれます。takeとかmakeとかgetとか。
ただ、日本語でもそうですけど、技術的・専門的な文章にはそれにふさわしい単語というのがあります。たとえば、「得る」に対する「取得する」だったり、「見る」に対する「閲覧する」だったり。
そんなようなニュアンスの違いからか、修正された単語がいくつかありました。

Get a session token manager instance for a user.

Retrieves a session token manager instance for a user.
ユーザーのセッショントークンマネージャーインスタンスを取得する

get が retrieve に変更されています。

retrieveは「回収する」とか「データを引き出す」というような意味がある単語で、getよりももっと積極的にセッショントークンを取得するような感じがするのかな。

以下は、is_single とか is_previewとかの条件分岐タグの実装箇所。

Set if query is single post.

Signifies whether the current query is for a single post.
(現在のクエリが単一の投稿かどうかを示します。)

Set if query is preview of blog.

Signifies whether the current query is for a s preview.
(現在のクエリがプレビューかどうかを示します。)

signify って単語も、 retrieve 同様、setより具体的なニュアンスの単語になっています。

さらに、’if’ の部分が ‘whether’に変更されています。
プログラムのtrue or false、つまり「〜かどうか」という二者択一はwhetherのほうがよく使われるようです。ifだと、true or falseだけじゃなく、もっと曖昧な答えがある感じもするのかな?

所有を表す ‘s と of

日本語で「〜の」と訳される所有格ですが、英語では 〜’s だったり of 〜 だったりします。

Filters the WordPress install’s locale.

Filters the locale of the WordPress installation.
(WordPressインストールのロケール(言語・地域設定)に関するフィルター)

所有格(‘s)と of は、日本語でどっちも「〜の」にあたるので違いがわかりづらいんですが、例外はあれど‘sは生き物以外では使わないのが一般的なようです。

エラーメッセージのニュアンス

管理画面にどれくらいの丁寧さの言葉を使うか、難しいですよね。
馴れ馴れしかったりそっけなかったりしても気持ち悪いし、丁寧すぎてもなんかやだし。

英語には敬語がないと思われがちですが、そんなことはなくて、日本語の「尊敬語」とか「謙譲語」のように定義されていないだけで、相手との距離感によっていろいろな表現が存在します。

ユーザとの距離感を考えて修正された部分を2ヶ所見つけました。
ここはPHPコメントではなく、実際にユーザーが目にすることのあるエラーメッセージです。

You can’t give users that role.

Sorry, you are not allowed to give users that role.

ただ「できない」って言い切るのではなく「できないことになってるんだよごめんね」的なニュアンスが感じられたほうが日本語でも心象は良いですよね。

I’m sorry, the link you clicked is stale. Please select another option.

Sorry, the link you clicked is stale. Please select another option.

頭のI’m が抜けて少しやわらかくなった感じですが、サイト内でバラバラな口調だったのを、Sorryに統一したということなのでしょうきっと。


以上、直接WordPressの機能とは関係ないところからいくつかピックアップしました。

WordPressのコントリビューターは今や世界各地に散らばっていて、英語のネイティブじゃない人も結構多くなっているはずです。日本人のコントリビューターも増えました。送られてくるパッチについてるコメントも非ネイティブが書いているケースも多分それなりにあると思うんですよね。で、こんな感じで後からコメントだけ修正されることもあるわけで。

つまり、英語が多少苦手でも、ネイティブのコントリビューターがよしなに直してくれたりするはず!なので、コードさえ書ければあまり気にせずにパッチを送ってもいいんだろうなあということですね。

私はコアにパッチを送るほどのスキルはないんですが、公式ディレクトリに簡単なプラグインを登録したことは数回あります。その時はプラグインそのものより、readme.txtを書くほうが難しくて….
そのあたりも添削してよしなに直しといてくれる有志がいるとうれしいなあと思ったりしています。翻訳のコントリビュートはたまにするけど、翻訳の前に原文がアレじゃあもうしわけない。。。

まとめになってないまとめ

  • 普段使っている英語プロダクトの翻訳に貢献するのおすすめ
  • Googleの「翻訳コミュニティ」も腕試しにおすすめ
  • 「しごとの基礎英語」の大西泰斗先生すきです