駆け出しフリーランスweb制作者さんに向けたQ&A ーフリーで10年生きられた振り返り

フリーランス10周年。振り返ってみて、フリーランスとして長く生きるのに大切だと思ったことをまとめました。

フリーランス10周年ということで、10年生きられた振り返りというか自己分析的なものを先日、Twitterで垂れ流しました。

これがフォロー外の方にも多く見てもらえたようです。

最近、フリーランス志望や学生兼業の若手の方とやり取りすることがあったり、Twitterでもよく見かけるようになりました。頑張ってるなーという人もいれば、大丈夫かな…という人もいます。
そんなわけで老婆心ながら、これからweb制作でフリーランスになる人・なったばかりの人たちの方々に伝えたいことをQ&A形式でまとめました。

10年前とは世の中もかなり変わってるし、そのまま使える話ばかりではないだろうけど、何かの参考になれば幸いです。

Q. web制作の仕事って、そもそも駆け出しにも声がかかるほど世の中にたくさんあるんでしょうか?

A. web制作会社は慢性的なリソース不足です。仕事はたくさんあります。

10年前、Twitterで「フリーになります」という旨をツイートしたその日にDMで仕事のお話をいただきました。
その日から今日まで、特別頑張って営業したことは一度もありませんが、産休以外は一度も仕事が途切れることはありませんでした。

まず大前提として、web業界は常に仕事を受けてくれるフリーランスを探しています。「誰かいい人いない?」というやり取りは今日もそこかしこで飛び交っています。
私も自分に来たお話を残念ながらお断りする際、代わりにできる人を紹介して欲しいといわれることがよくあります。そのくらい、制作会社は常にキャパシティ不足です。クライアント直請けにこだわらなければ仕事はごろごろあります。だから条件さえ満たせば仕事は継続的に入ってくるようになります。

「条件さえ満たせば」と書きましたが、その条件というのはケースバイケースで変わってきます。
予算・スケジュール・最低限必要な技術スキル…等に関しては、無理して合わせても後がキツイので、合わなければ仕方がないと割り切るしかありません。フリーランスで仕事を取るには技術力、と思っている人もいるかもですが、必ずしも高い技術が必要な仕事ばかりではないです。それに、技術力は後からついてくるものです。

Q. 技術力は後からついてくる、ならまずは何をすれば?

A. ビジネスパートナーとして選ばれるための最低限のこと、つまり「スピード感を持って連絡を返す」ということを徹底しましょう。

必ずしも高い技術が必要な仕事ばかりではない、と書きましたが、一方でもれなく必要なのは、おそらく「最低限の社会人スキル」でしょう。中でもフリーランスで継続して仕事を得ていくコツのひとつは、「スピード感」だと思います。

私自身も経験がありますが、発注元の会社やクライアントが飛ぶことはまぁある話です。そして、外注先のフリーランスが飛ぶのはもっとよくある話。Twitterでも定期的によくRTされていますが、普通に連絡が取れて納期を守れるだけで上位何割には入れる、そんな業界です。(そんな業界…については最後に)

発注側の立場で言えば、確実性、安心感が欲しいものです。この人ちゃんと返事くれるかな(ドキドキ)って思いながら連絡することって、結構あるのです。でもそれはできれば避けたい。全然レスポンスのないすごい人より、こまめに連絡してくれる普通の人に発注したい会社の方が多いのです。

そして「スピード感」について。これに関しては、制作作業自体が猛スピードである必要はなくて、レスポンスのスピード感のことです。
例えばメールを受けて2日後に「できました」と返す人よりも、5分後に「すみません3日かかります」と返す人のほうが安心感があり、後者に仕事を頼みたい会社の方がおそらく多いでしょう。

さすがに子ができて業務時間に制限できてからはメールやチャットにリアルタイムに返事することは難しくなりましたが、次の日には確実に返事をするようにしています。これにより相手方の信頼を勝ち取ることができます。

(それでもまれに返事が遅れてしまうときはそもそも連絡をもらったこと自体に気付いてないか、すこっと抜け落ちてる時なのですが、「あれ野村さんが1日返事ないなんて珍しいな、もう一度送っておこう」と遠慮なくリマインドをいただけるので、大変ありがたいです…もちろんなるべくそういうことはないように努めていますが、人間なのでたまには失敗することもあります。
で、その後挽回のために謝ったり、頑張れることもフリーランスとしては大切。そもそも挽回しようとせず消えちゃう人もいるわけで…)

家庭の事情や、副業などで返事を返せない時間帯・曜日があるのであれば、あらかじめその旨を伝えておくことも忘れないように。

とにかくフリーランスは「報・連・相」がちゃんとできる、納期やばいなって時はギリギリじゃなく早めに連絡する、っていうところが何よりも大切です。
駆け出しならなおさら、こういった小さな信用を積み重ねていかないと生き残れません。

Q. 営業なしでどのように仕事を受注しているのですか?

A. とにかくアウトプットする、普段の活動を見せる

私の場合、開業直後でも発注をいただけた決め手は

  1. Twitterやってた
  2. ブログ書いてた
  3. 事業サイト作ってた
  4. web系の勉強会にたくさん参加した
  5. 自作の WordPress テーマを配布してた
  6. WordCamp Nagoya でLTをした

です。
公開できる制作実績はたいしてなかったのですが、特に問題なかったです。
サンプルサイトの模写なんかを頑張ってる人も多いようですが、そういったものはあまり公開する必要はないと思います。それよりも、考え方とか普段の活動内容が見えてることが発注側にとってよかったようです

※模写自体はスキルアップとして大いにやれば良いと思います。ただ、実績としてポートフォリオサイト等でアピールするのは違うかな…。そういったものは、あくまで練習。野球選手が素振りをアピールするようなもの。人に見せるようなものではないのです。

※エンジニア系職種であれば、やはり成果物がGitHubで公開されているか、ソースコードがダウンロードできるようになっていると依頼しやすいです。
デザインや、ギリギリHTML, CSSまでならブラウザから見える範囲である程度はスキルの判断ができますが、サーバーサイド言語(PHPとか)の場合は完成サイトのURLだけ送られても判断に困ることが多いです。
なお、10年前はまだそこまででもなかったですが、今はGitはほぼ必須です。最低限「これから勉強して使えるようになります」でもいいので、習得する姿勢は示しておいてほしいです。

ちなみに、web業界は常に外注先フリーランスを求めてるっていう話に戻りますが、10年前の開業直後、参加した勉強会(WCAN)でたまたま隣の席になって名刺交換した人の会社から連絡がきて、仕事を請けたりしたこともあります。
発注者の立場だと、勉強会で知り合った人がフリーだったらきっと「チャーンス」って思うでしょうね。私も思います。

今は勉強会がないからチャンスが少ないけど、オンラインサロンとかがその役割を担ってんのかな?(知らんけど)ただサロンだと参加者属性が絞られるだろうし、やはり実際に会えることの良さもあるから、早くオフラインの勉強会ができるようになるとよいな、と思います。

Q. デザイン、コーディング、プログラム、解析、SEO…やることが多くて大変です

A. 全体をさらっと経験したら、早めにやらないことを決めて業務範囲を狭めていきましょう

広義の「web制作」に求められる技術スキルはどんどん幅広く、難しくなっていっています。最初は幅広く取り組めばよいけど、早い段階でやらないことを決めて斬り捨てていきましょう。
私は真っ先にデザインをやめました。

さらに自分のプロダクトなりサイトを持って、アウトプット内容もどんどん特化していって、「○○の人」って言われるまでなれれば、仕事は向こうからやってきます。
私の場合は「名古屋でWordPressやってるフリーの人」ってラベルがいつの間にかついてました。

Q. 受発注トラブルが怖いです

A. 健康に生き長らえるためには、地雷案件を事前に避けましょう。

たくさん案件をやって経験を付けていくのが大前提ですが、もちろん案件の質の見極めも大切です。
ただ未経験でそれを完璧に実行するのは難しいので、ある程度数こなして苦労した経験を積みながらヤバい案件や取引先を見極めるスキルを身につけるしかないです。

私は会社員時代にかなり体育会な働き方をしたので、フリーになった時には既に、もめたり消えたり未払いになりそうな取引先のにおいを嗅ぎ取る能力を身に付けていました。においを感じた時の取引は少額から、などリスクヘッジをします。
この能力だけは自慢でした。ただほんとに100%感覚なので、残念ながらまったく言語化して人に伝えられるようなものではないですが…。

ただひとつ言えるのは、嫌な予感っていうのはたいてい当たります。
なんか胡散臭そうとか、こいつ何言ってるんだ意味分かんない、みたいなことを少しでも感じたら受注を見送る勇気を持ちましょう。

発注書・受注書など、書類を交わしておくのも大切ですね。
最近はオンライン契約書サービスもいろいろ増えてきて、無料で使えるものもあるので積極的に活用していきましょう。発注元が書類を出してこなかったらこちらから注文請書を出すとか。「税理士に言われてるんで」的なことを付け足しておけば特に嫌がられることもないはずです(というか、それを嫌がる発注元とは仕事をするな)。

あとは気休め程度ですが、賠償責任保険に加入しています。詳しくは以下の記事で。

幸い、お世話になったことはまだありません。

なお、こういう取引先の見極め的なことの他にも、講座や書籍では学んだり言語化できない様々な社会人スキルが効率よく身につくので、特別な事情がない限り、まず就職を経験するのはとてもコスパがよいのでおすすめします。

Q. 自分が対応できない時のための発注先を持っておくべきですか?

A. あるに越したことはないですが、開業直後から頼るべきではありません。社会人経験(マネジメント経験)がないならなおさら。

ちょっと前にTwitterで、駆け出しフリーランスの方(?)が受注案件を孫請けに出したら発注先が飛んで賠償話になってる的な内容をRTで読みました。その話の真偽については分かりかねますが、前述の通りこの手の話は業界ではきわめてよく耳にする話です。いや、よく耳にしたらだめなんだけど。

私は会社員時代にディレクター的なことを経験していたので、再発注のリスクも理解してるつもりでしたし、開業後しばらくは人となりも技術レベルもよく知っているリアルな仲間にしか発注をしていませんでした。
社会人経験自体がないとか、人を動かした経験がないとかであれば、なおさら早まってはいけません。

また、万一クライアントや発注元が飛んだり未払いになった場合でも、外注さんには当然予定通りの支払いをする必要があります。そういう資金的な余裕がないときには絶対外注はすべきでありません。

しばらくやって業務の回し方が分かってきて、「その案件単位で見たら外注使うと赤字であっても、他の案件とのトータルで考えたら外注を活用したほうがリターンが大きくなる」というような計算ができるようになったら、自由にすればよいです。

Q. 駆け出しフリーランスはどういう案件を積極的に取っていくべきでしょうか?

A. 既存サイトの更新案件なんかはおすすめです

駆け出しさんが手っ取り早く実務経験を積むなら、新規サイト制作など単発の案件だけでなく、他人が作ったサイトの更新や改修をたくさんやるとよいと思います。
高い技術レベルを持った制作会社の仕事も知れますし、逆に底辺のひどいサイトも知れます。
前者に出会ったときは本当に勉強になりますし、後者に出会ったときも、直したりしてるとそれはそれで勉強になりますし、やたら自信がつきます。どちらに出会ってもメリットが多いです。(基本、後者の方が多いのですが…。)

継続的に付き合える制作会社と出会えれば定期的なサイトメンテナンスの仕事も入ってくるはずですし、何年かやっていれば、今までのお客さんや取引先から更新やら改修やらの相談が勝手に定期的にくるはずです。というか来なければおかしいのでそもそもフリーランスを続けられない気がします…。

Q. 制作会社からの案件だけではなくてクライアント直の案件も増やすべきですか?

A. 人による。折衝の得手不得手(個人の性格)や家庭の事情などで判断。ただ、1件でもよいので、施策を好きに提案できるクライアントがあるとめちゃくちゃ経験値を稼げます。

制作会社や代理店などからの外注案件だけでなく、直のクライアントを取りに行くかどうかは方針が分かれるところです。客先とのやり取りが苦手なら無理に増やす必要はないですし、育児や介護など家庭の事情により直案件を増やせない場合もありますよね。

とはいえ、自分の実験台にできる本物の事業サイトがあると経験値はすごい上がります。なので蜜月関係のクライアントを1件でいいので作れれば最高です。
私はたまたま会社員時代のお客さん数件と関係が続いてるのもラッキーでした。(元所属先の会社がつぶれたので、個人で契約をし直してもらいました)
新たに勉強したことを試すのはまずそのお客さんのサイト、って感じでいろいろやらせてもらいました。おかげで他のお客さんでも自信を持ってその技術を使えます。

私の場合は会社員時代はディレクター職だったこともあり、作るより客先回りが本業だったので、直請けは大切にしています。今は育児もあるため積極的には請けていませんが、数は少なくても絶やさないようにはしてます。

10年生からのメッセージ

なぜフリーランスなのか、というブレない軸を持つべし

フリーランスとは職業名でもなんでもないし、目的ではなく手段でしかないので、フリーランスを目指してるという人は、「何故フリーランスなのか」というのをちゃんと自分で再確認しておくべきです。

なお、私の場合はフリーランスを目指していたわけでは全然なく、母親が病気で倒れて実家の手伝いのためフルタイムで働けなくなったことと、当時の所属先から給料が出ない状況だったことが理由。思いつく選択肢の中でフリーランスしか選べなさそうだったから。つまり、たまたまです。

人それぞれ動機はいろいろあるだろうけど、何かの実現のためにフリーランスという手段があるわけで、その何かを自分の中で再確認しておくと行動がぶれなくなると思います。

企業理念や経営方針を掲げよう

ぶれない軸、ということでいえば、企業理念とか経営方針とかぶちあげてみるのもよいです。私の場合は、理念は「人助け」、方針は「求められることをやる」です。
主体性がないとも言えますが、自分のためでは手を抜いてしまい、人のためにしか頑張れない性格なので、この理念と方針になりました。人のためにならないことや、求められてないことはやりたくないのです。

受託をやめて自社メディアやプロダクトで一本立ちを目指す人も多いですが、私は依頼を粛々と遂行し達成することに充実感を覚えるタイプの人間なので、今までもこれからも人に頼まれたことをやっていく所存です。

受託への適性は人によるので、性格的に向いてる方向を早めに見つけられると良いですね。
「受託は先がない」とかいう煽りや、「自社サービスかっこいい」ってイメージに踊らされて自分を見失わないようにしましょう。

打算のない仲間を得よう

制作会社やクライアントとの関係を縦糸とするなら、よき同業の仲間が横糸と言えるでしょう。
普段から打算のない付き合いがあけば、逆にここぞのピンチで助けになってくれるはずです。仕事上のオーバーフローだけでなく急な病気や身内の不幸やそれこそ産休のときとか。

世の成功者の人はよく「運が良かった」と言います。成功者とまではいかない私も言っちゃいます。
でも「運も実力のうち」ともされてますよね。

では運とはいったい何者なんでしょうか?

運とは、「よき人間関係」だと私は思います。

運が良いときっていうのは、人に恵まれているとき。運が悪いときは人間関係がダメとまでは言わないけど、たまたま歯車の調子が悪い時ではあると思います。
そういうときは少しひとりの時間を作るとか、人やSNSとの距離感を見直すとかして、歯車の調整を行うことが大切です。

まとめにかえて、「web業界」に思うこと

WordPressの仕事は今後数年でなくなるかも、と常に肝に銘じながら10年。今のところなくなるどころかどんどん高度になる一方ですが、こりゃひどいってサイトに出会うことも増え、呆れるとともに「こんなサイトが世にたくさんあるならしばらく私の仕事なくならんわ」と思ったりもする複雑な心持ちではあります。

私、フリーランスになる前年、2010年にこんなことをツイートしてしました。

残念ながら、こういう業者は今でも撲滅していません。名前や手法を変え、ゾンビのように生き長らえているようです。

再三触れた「発注元や外注先がよく飛ぶ」とか「ちゃんと連絡が取れるだけで勝てる」みたいな話は、まともな業界の姿ではないですよね…。それだけ参入の障壁が低くて、玉石混交なのがweb業界です。(そもそも、「業界」にすらなってないという人もいます)
他の業界と比べて低く見られるのも嫌ですし、自分を含めたweb制作にかかわる皆が、「自分が稼げる」だけではなく、少しでもweb業界を良くするような行動、振る舞い、生き方を心掛けていけたらいいんじゃないかな、と思っています。一緒にがんばりましょう。

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